原稿が進まない。

コンピュータ上のエディタで書き始めると前後のつながりが気になってはことばをあちこちに動かし、辞書で調べては単語を取っ替え引っ替えし、構成が悪いからとバックスペースキーを押しっぱなしにして何もかも消してしまう。こんなことを数行ごとにやっているのだから、もちろん文章は完成することがなく疲労ばかりが溜まっていくし、エディタの画面は真っ白のままだ。必要なのは文章を前へ前へと進めること、最後の句点を打ってとにかく終わらせてしまうことだと言うのに。

ひとつの解決法は、草稿を紙にペンで書くことだった。これはどうして原点に帰ったいい方法じゃないか? 書くのに使うペンはPelikanのM405という万年筆でブルーブラックのインクが入っている。紙はなんでも使うが一番のお気に入りはMoleskineの横罫ノートで、この少しざらっとした感触の紙に印刷された6mmの罫線の間を文字で埋めていくのはなんと気持ちのいいことか。もちろんどんなペンと紙を使ってもよいのだけれども、重要なのはペンは消せるインクではないこと、それから使っていて疲れないこと。その条件に万年筆はぴったりで、インクは濡らさなければ簡単に消えないし、太めのボディに筆圧が低くても濃い文字が書けるのはぴったりだ。紙は書いていて指先に気分が良くなるような触覚のフィードバックがあることで私はペンに適度な引っ掛かりがあるのが好きだ。ここは好みだろうから、いろいろな紙を試して探すのがいい。

さて、インクを使うことで書いた次の瞬間には紙に文字が固定される。後戻りはできないから先に先にと文章を進めるしかない。気に入らない文を書いてしまったら二重線やミノムシで文字を消すことはできるけど、それだって簡単に/全てをと言うわけにはいかないのだ。とにかく書き進めることができから完璧主義に陥る前に終わりを目指すことができる。

そういうわけで、とりあえずは短いものだけでも第一稿を手書きで書くことにした。ときどき文章は乱れるし、書き直したい部分が出てくるものだけど、それはテキストエディタに打ち込んでデジタルデータにするときに読み返したり修正したりすればよい。今回のweblogもノートに万年筆で書いた文章をもとに執筆した。